生体マルチセンシングシステムの究明と活用技術の創出
研究総括 |
入來 篤史 理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー
|
研究期間 (年度) |
2021 – 2028
|
概要 | 本研究領域は、生体感覚システムおよび末梢神経ネットワークを包括した「マルチセンシングシステム」の統合的な理解、および可視化・制御法の開発を目標とします。これを達成するために、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)と国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が4プログラム(CREST、さきがけ、AMED-CREST、PRIME)を同時に立ち上げ、互いに連携しながら研究を進めます。そのため、本研究領域では研究総括(Program Officer: PO)に加え、4プログラムの連携を統括する研究領域統括(Program Supervisor: PS)を配置しています。また、本研究領域では、JSTに申請された研究提案書をAMEDと共有する可能性がありますので、その旨を予めご承諾の上ご応募ください。
<研究領域統括方針>
感覚機能と自律神経系は、生体が恒常的に機能を果たすためのフィードバック系として重要な役割を担っています。一方、加齢をはじめとする内的・外的ストレス等による感覚機能の低下や喪失、さらに末梢神経系の障害は、健康障害と慢性疾患発症の大きなリスク要因です。そこで生体感覚システム・末梢神経ネットワークを包括した「マルチセンシング」の生理機構を統合的に理解することにより、全身臓器の関わる疾患を標的とした新規治療法の開発や、生活の質(QOL)の向上、ひいては健康寿命の延伸が可能になると期待されます。また、マルチセンシングシステムを介した革新的技術の社会実装は、感覚代行、感覚シェアなど、より豊かで幸福な社会の実現に貢献することができます。
JSTでは基礎原理の解明および基盤・応用技術の開発を軸として、センシング機能の拡張や新たな機能の獲得を目指します。一方、AMEDでは健康・医療への出口を見据えた基礎研究から医療応用を軸に、失った機能の回復・維持、すなわちセンシングと調節機能の回復・維持・予防を目標とします。
具体的には、マルチセンシングシステムの動作機構の解明、病態解明、活動状態を可視化・定量化する技術開発、およびそれらを基にした副作用の少ない治療法や予防法の開発、個人に適した医薬品、医療機器、低侵襲性デバイスの創出等を目指し、同時に、生体のマルチセンシング機能の拡張や高度なセンシングメカニズムの応用によるイノベーション・シーズの創出を出口としてとらえ、JSTと
… もっと見る
AMEDが両輪となって推進します。
本研究領域では、4プログラムの研究者がネットワーク型研究所を構成することによって、相互連携と若手研究者のステップアップ、さらに研究の発展を促します。また、ムーンショット型研究開発制度(令和2年度~11年度)目標2「2050年までに超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現」、AMED 脳とこころの研究推進プログラム(精神・神経疾患メカニズム解明プロジェクト、領域横断的かつ萌芽的脳研究プロジェクト、革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト、戦略的国際脳科学研究推進プログラム、脳科学研究戦略推進プログラム)(令和3年度~令和11年度)との連携も視野に入れて活動していきます。
<研究総括方針>
本研究領域では、感覚生理学・分子細胞生物学・神経科学等のライフサイエンス分野を超えて、電子/機械工学・情報/数理科学・認知/心理学等との異分野融合を推進することにより、多種感覚受容システムおよび末梢神経ネットワークを総合した「生体マルチセンシングシステム」の動作原理を解明し、日常生活に実装する基盤・応用技術を創出します。
近年、計測技術の発展により新たなセンシング機能やメカニズム解明への切り口が得られつつあります。また種々の感覚情報が、免疫・代謝・内分泌などを含む他の生体システムと相互作用して恒常性が維持されたり、意識下で統合されて多様な知覚・情動が生み出されて人間観や世界観に影響することも分かりつつあります。さらに、仮想/拡張現実に代表されるICT技術やウェアラブルデバイス等の開発から得られた生体感覚研究の知見を、再びフィードバック・融合することにより、ヒトの持つセンシング機能を生体の内外で拡張することも期待されます。
これらの背景をもとに、本研究領域では、従来の各感覚モダリティや生物階層の境界条件内に特化した要素還元的な研究ではなく、生体内外からの様々な環境情報入力が全身生理機能に与える影響とそのメカニズム・ネットワークを解明する研究や、それらを活かしてマルチモーダルな感覚情報を統合的に理解し、生体センサーフュージョンを実現するための技術開発を推進します。また、マルチセンシングメカニズムを可視化、操作、伝送、提示するための基盤・応用技術の創出も目指します。加えて、ヒトには本来備わっていない多彩なセンシング能力(多様な生物が進化の過程で獲得した能力や、現代科学技術が可能にした能力など)を解明し、ヒトのセンシングシステムの新たな理解の切り口とし、これらを活用可能とする原理や有用なデバイスの開発を推進します。 隠す
|