時空間マルチスケール計測に基づく生物の復元あるいは多様化を実現する機構の解明
研究総括 |
上村 匡 京都大学, 大学院生命科学研究科, 教授
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研究期間 (年度) |
2024 – 2029
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概要 | 本研究領域では、幅広い時空間スケールの中で生物が示す応答の二面性に注目し、分野横断的な計測・解析技術の最適化や開発を通して、この応答を実現する機構を解明し、さらに制御することを目指します。
生物界で見られる事象は、空間的には分子レベルから組織、個体、集団レベルまで、時間的には瞬時に起こる化学反応から個体の成長や世代を越えた形質の発現まで、広範なスケールにわたります。この中で、外界からの刺激や時の移ろいの中で変化した生物は、元の状態に戻ろうとする(復元)一方で、さらに変化を推し進めて、元とは異なる状態で安定する(多様化)こともあります。生物が示すこれらの応答を、本研究領域では「生命力」として扱います。
生物の復元や多様化の機構を解明するには、広大な時空間スケールにまたがる事象間の因果関係を明らかにしなければなりません。そのため、生命力の解明に当たっては、取得するべき情報のモダリティーやデータ量に応じて既存の技術を組み合わせる、あるいは新技術を開発することにより、目的に適した計測手法を構築する必要があります。さらに、近年はオミクス技術などの発展により、時空間スケール内の各座標について、膨大かつ複雑なデータの取得が可能になっているため、個々のデータあるいは複数のデータの中から生物学的意味を抽出・理解し利活用できる情報科学的手法を導入することも重要です。
計測、データ解析、仮説の立案と検証からなるサイクルを回して、様々な文脈において生命力を実現する機構を明らかにすることで、基礎生命科学における未解決の問題が解かれるのみならず、さらに未知の生命力の発見につながることが期待されます。
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