ダンパー型ケーブルの開発と建築構造物に適用した場合の耐震設計法の確立
研究責任者 |
河野 進 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授
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研究期間 (年度) |
2006 – 2009
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概要 | 兵庫県南部地震以来、発生が確実視されている南海・東海地震に対して被害が予想される地域での新築建物および既存不適格建物に対する耐震性向上の要求は高い。振動を抑制するダンパーケーブルを用いた耐震システムでは、振動抑制効果により、建物機能を喪失しないという特徴があり、老朽化が進む建築・土木構造物を中心とした社会資本の機能回復および維持を簡単で安価なダンパーケーブルを用いて行うことが可能である。ダンパーケーブルは、建築物に広く用いられている鉄骨ブレース(筋交)、鋼板壁、コンクリート壁などの一般的耐震要素の代わりに用いられるもので、初期張力を与えて建築物に設置し、その張力変動により地震時の水平力に抵抗すると同時に減衰機能によって建物振動を抑制する。今回製作した製品は、素線用に開発した超高強度鋼素線(2300N/mm2)と低降伏点鋼素線(420N/mm2)を混合使用した合成ケーブルである。地震時の建物変形による伸縮が、低降伏点鋼素線のエネルギー消費によるダンパー機能を生み出す一方で、超高強度鋼素線がケーブル全体の張力を常に引張に保つ役割と地震水平力に抵抗する役割の両方を果たすことを実験と解析で確認した。本研究で開発したダンパーケーブルは、従来の同種のケーブル(つり橋や斜張橋ケーブル等)が弾性的挙動のみで外力に抵抗するのに対して、エネルギー消費機能を保有するもので、地震時の振動制御に大きな役割を果たす付加価値の高いケーブルであることを証明した。
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