光パルス間位相の制御技術の開発とその超高速光時分割多重通信への応用
研究代表者 |
戸田 裕之 同志社大学, 工学部, 准教授
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研究期間 (年度) |
2007
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概要 | 40Gbit/s を超える超高速信号は電子回路で扱うことが非常に難しいため、将来の高速光通信において、その発生や伝送には光時分割多重(optical time-divisionmultiplexing; OTDM)技術が用いられると期待されている。OTDM 多重回路は、光信号に遅延時間を与えて合波することで、例えば4 つの40Gbit/s 電気信号と40GHz 光クロックから160Gbit/s の光信号を生成したり、入力光クロックパルスの繰返し周波数を拡大(逓倍)させるものである。現在、米国Pritel 社やCalmar Optcom 社などから、光ファイバの遅延時間を利用して、光クロック逓倍回路や、10Gbit/s 光信号から160Gbit/s 光信号への多重回路などが市販されている。OTDM による光ファイバ伝送では、隣合う光パルス電界の位相差が伝送特性に影響を与えることが知られている。また、多重数を増やすなどによって光パルス幅が1ビット周期に近くなると、隣接光パルスの裾との干渉によって、光パルス間の位相が変化すると、光パルスの振幅が変動してしまう。したがって、OTDM 光回路の実用化においては、光パルス間位相の制御・安定化は必須の課題である。しかしながら、先述の市販装置は、光パルス間位相の制御や安定化は行われておらず、実験室レベルの伝送には使用可能であるものの、実用レベルの伝送装置には用いることができない。本課題は、幅ps オーダーの光パルス間位相を制御・安定化する技術を開発し、その超高速時分割多重通信への応用を図ることを目的とする。OTDM 回路の基本構造は、干渉計の二つのアームに時間差(光路差)を設けた遅延干渉計である。この干渉計の光路差を安定化すれば、光パルス間位相も安定化できる。本課題では、干渉計の光路差の安定化に、単一モード発振の連続光レーザ(波長: .CW)を用いる。波長.CWの光に対して出力が最大または最小となるように干渉計を安定化させておく。光パルスの中心波長を.P とする。.CWを変化させると、.P ..CWに応じて光パルス間位相を制御することができる。本課題では、例えば40GHz 光クロックから、隣接光パルス間の位相を安定化させた160GHz 光クロックを生成する4 倍の逓倍回路を作成することを目標とする。光学系の配置を工夫することで、連続光レーザは1台で良いと考えている。作成した逓倍回路の特性を測定して、市販の逓倍回路に対する優位性を明らかにする。さらに本技術は、2 パルス間の位相差を符号化するタイプの量子光通信にも適用できる可能性がある。位相差に対応する.CW の連続光を送信することで、伝送信号の受信が可能となる。このような量子光通信への応用についても検討する。本技術の有効性が確認できれば、将来の超高速光時分割多重通信へ広く使用されることが期待できる。また、基本原理についてはすでに確認済みであることから、実現の可能性も高いと考えている。本課題においては共同研究は考えていないが、本技術の有効性が確認できた場合、雄島試作研究所やオプトクエストと将来の実用化に向けた研究開発を行いたいと考えている。
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