ペーパースラッジを原料とする高速・高収率バイオエタノール生産技術の開発
研究責任者 |
佐古 猛 静岡大学, その他の研究科, 教授
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研究期間 (年度) |
2007 – 2010
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概要 | 本研究開発では、食料と競合しない木質系バイオマスから、亜臨界水加水分解と酵素糖化という環境負荷が小さい化学および生物プロセスを用いて、セルロースの過分解を抑制すると共に、処理時間が短く、グルコース収率が最大となる技術の開発を目指す。すなわち12時間以内の短い反応時間において、80%以上の高い収率で、バイオエタノールの原料であるグルコースを生産する技術の開発を行う。現在、木質成分からのバイオエタノール生産における最も難しい課題は、セルロースの加水分解により効率よくグルコースを生産する技術の開発である。そのために本研究者らは、原料として排出量が多く、既に加水分解の阻害物質であるリグニン成分が除去されているペーパースラッジを用いて、その中のセルロース分を、高速で低環境負荷の亜臨界水加水分解法、高選択的で穏和な反応条件の酵素糖化法、そして最終的には両者を組み合わせた亜臨界水加水分解+酵素糖化2段階法でグルコースに変換するための最適処理条件の決定、エネルギー、コスト、環境適合性の評価を行う。一方、ペーパースラッジ中のセルロースを分解した後に残った無機分については、商品価値の高い製紙用無機原料としてリサイクルする技術を開発する。今回の技術開発により、ペーパースラッジ中の全成分の有効利用が可能になり、製紙産業における完全有効利用・ゼロエミッション技術が確立する。現状では亜臨界水加水分解と酵素糖化の複合技術について、ベンチプラント規模で、工業化を想定して研究開発が行われた例はない。本研究開発が終了する時点では、ベンチプラントの実証試験により、実用プラントの設計、建設、運転に必要な基礎データはほぼ得られる予定である。
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