研究代表者 |
難波 啓一 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 教授
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研究期間 (年度) |
2002 – 2007
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概要 | 人間から単細胞生物に至るまで、生命活動の基本的機能である生体の動きを駆動するのは、蛋白質や核酸などの生体高分子が集合してつくる複雑な立体構造で、これを超分子ナノマシンと呼びます。超分子ナノマシンのひとつに、高速に回転しながら細菌の動きを自在に制御する「細菌べん毛」があります。それは、柔軟に自己構築する仕組みを持ち、人工機械では得られていない超高効率なモータです。 本研究では、べん毛の分子構造、動作原理の解明、べん毛形成機構の解明を通して、ナノ構造自己構築技術や超高効率微小エネルギー変換機構の解明を目指しました。ナノスケールのべん毛を精密に調べるためにX線構造解析、極低温電子顕微鏡測定技術、光学顕微ナノ計測法の基盤計測手法を開発しながら、べん毛の仕組みの解明に取り組みました。べん毛本体のらせん状スクリューの構造、スクリューとモータの回転軸をつなげるジョイントや自己構築する蛋白質の輸送システムの構造等を明らかにし、また、べん毛が構築される過程の蛋白質輸送の仕組み、ATPエネルギーとプロトン駆動力の役割を解明しました。 本研究は、米国のエール大学と補完的な協力関係の下で行われました。日本側は、べん毛の構造や機能・動態の解明を行い、米国側はべん毛を構成する蛋白質を遺伝子操作によって大量発現させ、構造解析に供する試料を作り出しました。生物の高効率エネルギー変換機構の仕組みは、将来の人工ナノマシンの設計・構築に向けたバイオテクノロジーの基盤作りに貢献すると期待されます。
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