研究代表者 |
青野 正和 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授
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研究期間 (年度) |
2002 – 2007
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概要 | ナノメートル程度の寸法の導電性を持つワイヤーを配列した微細な構造体(ナノ量子導体)では量子効果が現れ、その特性を活かして、人工的に配列したものを「ナノ量子導体アレー」と呼んでいます。現状をはるかに凌駕するコンピュータの核となる可能性を持っています。 本研究では、ナノ量子導体を互いに適切な相互関係を持たせて配列することにより、メモリ機能や演算能力を持たせることを目指しました。数ナノメートルという極微小な距離であるナノ量子導体を計測・制御するため、走査トンネル顕微鏡の多探針を新たに開発しました。これを使い、フラーレンC60の可逆的な重合・脱重合制御に成功し、現状の記録密度の数百倍となる高密度メモリへの足がかりを得ました。また、カーボンナノチューブの量子伝導特性の測定にも成功し、ナノスケール領域で多探針を操作できる走査トンネル顕微鏡としても有効であることを確認しました。シリコン材料を用いた原子スイッチ集積化技術を開発し、約1GHzでの動作を確認し、高速ロジックデバイスへの応用に目処をつけました。さらに、金属や有機分子などいろいろな材料によるナノワイヤー作製技術の開発をし、有機分子(ポリジアセチレン)ナノワイヤーへの電荷注入により、金属-絶縁体転移を観測し、新しいデバイス材料の可能性を掴みました。 本研究は、英国のケンブリッジ大学と共同で行われました。日本側は、多探針顕微鏡のナノ計測技術、英国側は電子ビーム法などのナノ加工技術といった、それぞれの強みを持ちより補完的に研究が行われました。この成果は、新規なコンピュータ・アーキテクチャの実現など、今後、新しいナノエレクトロニクス世界を拓くことが期待されます。
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