研究責任者 |
小池 卓二 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授
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研究期間 (年度) |
2010 – 2011
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概要 | 聴覚器官は耳介と外耳道からなる外耳、鼓膜と耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)からなる中耳、および感覚細胞が存在する内耳(蝸牛)により構成されている。耳小骨は、空気中の音波によって生じた鼓膜の振動を、蝸牛に効率よく伝達する役割を担っている。耳小骨は靭帯や筋腱で振動しやすいように鼓室内に保持されているが、これら靭帯・筋腱が病的に硬化すると、耳小骨の振動が妨げられ、難聴が生じる。特にアブミ骨を保持している輪状靭帯が硬化すると、聴力が大きく低下する。上記の問題を解決するため、申請者と東北大学のグループは、耳小骨可動性計測装置を開発した。本装置は、手持ちの計測プローブにより、耳小骨に10 micron程度の変位を与えながら、その時の反力を瞬時に計測し、耳小骨の可動性(コンプライアンス)を定量的に評価するものである。本装置を慶應義塾大学の協力により、数名の患者の耳小骨可動性を術中に計測したところ、聴力低下量と、本装置によるコンプライアンス計測値には有意な相関がみられた。これにより、術中に本装置により、耳小骨の可動性計測を行えば、病態の定量評価や術後の聴力予測が可能となり、最適術式の選定や術後聴力成績の向上・安定化に大きく寄与する可能性があることが明らかとなった。 上述のように、本装置および計測手法の有用性は示されたものの、計測時には脆弱な耳小骨を直接押し動かして計測を行うため、耳小骨破壊のリスクが僅かながらあり、特に、耳小骨に疾患による脆弱化が見られる場合には、計測自体を躊躇せざるを得ない場合もあり、これが実用化の妨げになっていた。そこで本研究では、パルスインジェクタを用いた微小水流により耳小骨に変位を与え、光プローブにより非接触で耳小骨変位を計測可能な、新たな耳小骨可動性計測装置を開発する。
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