概要 | ナイロン合成の鍵中間体となるシクロヘキサノンを、シクロヘキセンから1段階で收率よく合成できる触媒プロセスの開発を行なった。例えば6,6-ナイロンは、シクロヘキサンをKAオイルに酸化し、さらに環開裂でアジピン酸に導いてから、ヘキサメチレンジアミンとの縮合重合によって合成される。また6-ナイロンは、シクロヘキサノンをオキシム化した後転位させることによってε-カプロラクタムに導き、その開環重合によってポリマー化している。このようにシクロヘキサノンはナイロン合成において重要な存在であり、工業原料として汎用されるシクロへキセン(水素化によってシクロヘキサンに変換する)を出発物質にして、簡便にかつ効率的に合成する触媒システムの開発を行なった。 シクロヘキサンを直接に酸化する従来法はラジカル反応のために反応の制御が困難であり、シクロヘキサノンへの高い選択性(80%)を維持するためには、工業レベルでは低い転化率(5%)での反応操作に限定されていた。これに対して本研究では、シクロヘキサンの前駆体であるシクロヘキセンを出発物質に用い、オレフィン類への水酸基導入反応として、DMA(N,N-ジメチルアセトアミド)溶媒中、PdCl2(塩化パラジウム)を触媒として、3気圧の酸素雰囲気で水の共存下の新規の系で、シクロヘキセンの反応を行なった。その結果、シクロヘキセンからの收率73%で目的とするシクロヘキサノンを一段階で得ることができ、10倍以上の効率をもつ触媒系を開発した。
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