培養細胞を用いた膜蛋白質機能解析のための新規平面脂質膜の開発
研究責任者 |
奥野 貴士 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授
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研究期間 (年度) |
2010
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概要 | 本研究では、気-液界面に作製した平面脂質膜に膜蛋白質を再構築し、新しいタイプの膜蛋白質の機能イメージング解析技術の開発を目的とした。研究では、細胞膜を気-液界面に再構成する条件検討と、培養細胞から細胞膜を切出す条件検討をそれぞれ並行して実施した。 再構成の条件検討には、試料量が十分準備出来る大腸菌由来の反転膜小胞を用いた。実験を実施した結果、反転膜小胞をリポソームと融合し、脂質の成分を気-液界面に展開出来る事を、蛍光顕微鏡解析により明らかとした。さらに、気-液界面の平面脂質膜に膜蛋白質が再構成されるか検証した。現時点で、膜蛋白質の発現量の問題から、気-液界面に明確な膜蛋白質由来の蛍光を確認には至らなかった。今後、膜蛋白質の発現量を増加させるなどの改善を行い、気-液界面の平面脂質膜上の膜蛋白質の解析を発展させる。 さらに、大腸菌の膜蛋白質だけでなく、ヒト培養細胞膜から細胞膜を切出す条件検討を行った。ヒト培養細胞から調製した細胞膜を気-液界面に添加し、ヒト細胞由来の膜蛋白質解析に応用、実用化への発展が期待される。研究を実施した結果、一本鎖のアルキル鎖を有する陰イオン性界面活性剤を培養細胞(HeLa)に添加すると、効率的に細胞膜から数十マイクロメートルサイズのBleb(小胞状の膨らみ)が生じる事を見いだした。さらに、細胞膜機能の損傷を低減させる界面活性剤を見いだした。超音波や還元剤などを添加し、生じたBlebを細胞から切り離す条件を検討したが、現時点で、生じた小胞を細胞から切り離す効率は高く無い事が分かった。今後、物理的、化学的に細胞から小胞を効率的に切り離す事に焦点を絞り研究を展開していく。本研究を実施し得られた成果は、膜機能解析のための新規平面脂質膜の開発のために需要な知見であり、大きく進歩した。
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