概要 | 申請時には交流磁場曝露 (60 Hz, 50 mT) のみでは細胞毒性は無いこと、交流磁場を曝露することで抗がん性抗生物質マイトマイシンCとシスプラチンについては作用が約2倍となることがすでに明らかとなっていた。そこで本研究では、交流磁場曝露 (60 Hz, 50 mT) により作用増強される抗がん剤の探索として、新たに5種の抗がん性抗生物質(アクチノマイシンD、ダウノマイシン、ブレオマイシン、ミトキサントロン、ジノスタチン)の作用について検討した。その結果、抗がん剤の濃度換算における作用増強率(1.35~1.03倍)は各薬物で異なるが何れも交流磁場曝露により作用増強が認められた。ここで示す作用増強率は、横軸を抗がん剤の各濃度、縦軸を生存率として、非曝露群の値をプロット、結んだ線を検量線とし、磁場曝露群の生存率の値より抗がん剤の濃度が磁場により何倍上昇したかを示す。作用増強率(抗がん剤濃度)が1.03倍となったジノスタチンの場合でも、ジノスタチンのみ(非曝露群)に比べ、ジノスタチン+交流磁場群の生細胞数は50%減となり、この差は統計処理にても有意差が認めら作用増強は確認できた。 さらに、抗がん剤の細胞膜透過率の測定結果から、磁場曝露群の培養液中に残る抗がん剤量は非曝露群より少なく、ちょうど生存率との相関が見られたことや、各抗ガン剤の作用増強率と作用機序、分子構造から、交流磁場の影響は、抗がん剤の作用機序というよりは抗がん剤の細胞膜透過率に影響を与え、分子量の大きいものは作用増強率が低くなることが示唆された。以上の結果より、交流磁場曝露により作用を抑制された抗がん剤はなく、これまで検討した7種の抗がん剤で全て作用増強されることが明らかとなった。
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