糖尿病性腎症の新規治療法の開発とモデルマウスを用いた薬効評価系の確立
研究責任者 |
稲田 明理 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), その他
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研究期間 (年度) |
2010 – 2011
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概要 | 周知の通り、日本では生活習慣病の1つである2型糖尿病が深刻な問題となっており、急速に患者人口が増加している。一旦、糖尿病になると生涯完治することはなく、高血糖が続くと合併症を併発する。糖尿病性腎症は合併症の1つであり、これが悪化すると透析が必要となる。また、日本透析医学会統計調査によると透析導入の原因の1位は糖尿病性腎症であり、全体の43%を占めている。さらに、関連論文によると、糖尿病性透析導入患者の1人1ヶ月にかかる医療費は約43万円と高額であり、糖尿病医療費高騰問題の一要因となっていることや、透析導入によってQOL(Quality of life:生活の質)も著しく低下してしまうと報告されている。そこで、糖尿病患者が腎症を併発した場合(早期腎症)、透析への進行を食い止めることが重要である。そこで、本研究では糖尿病性腎症の成因を明らかにし、治療薬の開発等を目指す。糖尿病性腎症の病態や成因を研究するためには、動物モデルが不可欠であるが、これまでヒトの糖尿病性腎症を再現できる適当なモデルが無かった。そこで申請者はシングルラインで十分な効果が得られる糖尿病モデルマウスを開発した。このモデルマウスは転写因子ICERをβ細胞に過剰発現させ、インスリン合成とβ細胞の増殖の両方が抑制されるよう設計されているので、生後2週目より高血糖をきたし、インスリン分泌不全から重度の糖尿病を発症する。高血糖は死ぬまで持続し合併症(糖尿病性腎症)を引き起こす。本研究では、このマウスが糖尿病性腎症のモデルとして利用価値があるかを検証し、糖尿病性腎症の成因、治療薬の開発等を目指す。有用なモデルマウスを確立することができれば、糖尿病研究が進み、糖尿病患者人口を劇的に減らすことができ医療費高騰問題の解消につながる。健康と財政の両面において大きく貢献するものである。
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