研究責任者 |
金 岡秀 東京大学, 生産技術研究所, その他
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研究期間 (年度) |
2010 – 2011
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概要 | 石油は陸上の原油資源が地球上の特定の地域に偏っており、海底に良質の油田が多数存在することから、その輸送と採掘が海洋環境で行われる場合が多く、それに伴う海上油流出事故も後を絶たない。海上流出油は海面を移動しながら拡散を続けるため、その防除は時間の経過とともに格段と難しくなる。更に拡散した油は揮発成分の減少とともに粘度が増し、油と海水が混ざり合って安定化するいわばエマルジョン(Emulsion)化が進行するため、海上油流出事故に対する迅速かつ有効な初期防除は、油流出事故による被害を最小に止めるための最優先課題である。海上流出油の防除には、環境への配慮から油処理剤等による化学的処理より機械的回収が優先されるが、機械的回収ではオイルフェンス(Oil Boom)が主たる手段となり、浮遊流出油の拡散を防止し回収の環境を整える。ところがオイルフェンスの展張には作業船と専門の作業員が必要となり、事故海域から近くにこうした人力と設備がないと、素早い初期対応は極めて難しい。また高波や強風を伴う荒天の海象も、防除作業に対する深刻な阻害要素である。一般に海上油流出事故が荒天下で多発するのに対し、人力に頼る現状の防除作業は、人命安全と作業性低下の問題があるので、風力階級 5、有意波高 2 m以上の海象ではその実施が困難とされている1)。こうした現状を踏まえ、本研究・開発では海上油流出事故に対して最も有効でかつ人的にも安全な防除手段として、新たな自律稼働防除システムの導出を目指し、その本格開発に先立ち、実用化に向けたフィージビリティスタディを行う。「スマート型海上流出油防除システム」と名付けた本システムは、無人でオイルフェンスの展張を行う自律型水上ビークル(Autonomous Surface Vehicle; ASV)をプラットフォームとして構成される。本システムでは、浮遊流出油による被害を最小に止めるよう、知能化技術に基づいた最適誘導の手法で制御することを、重要な特徴とする。
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