概要 | 本研究の目標は、自然界に大量に存在するD-グルコース、D-マンノース、D-ガラクトースから希少糖であるD-アロース、D-タロース、D-イドース、D-アルトロース、D-グロースを合理的かつ簡便に合成することである。その実現手法として、不斉ジヒドロキシル化触媒を用いて、糖質内に二重結合をもつD-グルカールなどに対し、ジヒドロキシル化反応で二重結合の上下の面を選択するという方法を考えた。これまでに、2,3位に二重結合を持つグルコース由来の基質に対し、Sharplessの不斉ジヒドロキシル化触媒(AD-mix-α, AD-mix-β)を作用させたが全く反応は進行せず、当初の計画どおりには進まなかった。そこで、触媒制御より先に、基質制御を調べた。すなわち、キラル源を持たないマイクロカプセル四酸化オスミウム(触媒量)とモルホリンオキシド(化学量論量)を用いて反応を行った。その結果、反応は進行したものの、ジオール化が二重結合の上から起こり、希少糖のD-アロースではないD-マンノースが中程度の収率で得られた。今後の展開としては、このジオール化が進行した条件で不斉源を添加し、逆の下からジオール化を進行させること(D-アロースが得られる)、さらに、D-グルコースの代わりにD-ガラクトースを用いることで、上下いずれの面からジオール化が進行しても、それぞれD-タロース、 D-グロースの希少糖が合成できる。
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