強風域特化型風力発電システムのダブルピッチ失速制御系の実証研究
研究責任者 |
玉城 史朗 琉球大学, 工学部, 教授
|
研究期間 (年度) |
2011
|
概要 | 風力発電システムは再生エネルギー活用型発電システムとして実用化が進んでいるが、それは100kW以上の大型機のみである。一方、小型風力発電システム(10kW未満)は、小規模電力供給システムとして、揚水、照明、遠隔地や山岳地における電力源としてその用途は非常に幅広い。しかし、その普及は遅々として進んでいない。その理由は、強風による羽根の過回転による破損事故の多発に起因する。すなわち、15m/s 以上の強風域で小型風力発電システムを運転すると過回転を誘発し、その結果、羽根が遠心力により破壊されるという現象が起きる。大型風力発電システムの場合は、風速に応じてピッチ角をモーターで変化させることにより、能動的に羽根に失速制御を行わせて過回転を防止している。しかし、小型風力発電システムにこのような失速制御方式を採用すると、非常にコスト高になるばかりではなく、メンテナンス費用も膨大になり、その結果、実用化に程遠いシステムとなる。このような欠点を克服するために、我々は、強風域で羽根が過回転になると増大する遠心力の作用で自律的に失速制御を行う機構を有する風力発電システムを開発した。この失速制御機構は、以下のような仕組みである。まず、第一に、風車が受風面に強い風を受けると羽根は風圧で後方に押され、その結果、失速角度となり失速する。第二に風速が強まり羽根の遠心力が増大すると、その力で羽根の軸は中心線方向に移動すると共に、傾き角が逆ピッチとなり、その結果、失速制御が達成できる。それらの失速制御運動は、風速の程度に応じて、前後方向、および、回転方向への独立的な運動、あるいは、それらが連成された運動を行うことを可能とする。そして、失速制御が達成され、風車回転が減少すると、遠心力が消失するので、そのばね機構で羽根は元の位置に戻り再度回転運動を行なう。すなわち、羽根に取り付けられたばねのパッシブ制御による自律的失速制御機構である。本研究では、小型風車のカットアウト風速である15m/s-25m/sでの風力エネルギー回収を目指して、高風速でも運転可能な小型風力発電システムの開発を行う。
|