概要 | 現代の神経科学技術の発展は、頭蓋という物理的境界を越えた脳の融合や発生を可能にしている。例えば、ヒト脳と機械の接続(Brain-Machine Interface; BMI)や、複数人の脳の間での通信(Brain-to-Brain Communication; BBC)、幹細胞を培地上で脳組織に誘導する脳オルガノイド、その脳組織の動物脳への移植といったものがある。これらの事例では物理的境界に加え、自己と他者、有機と無機、生物種など様々なタイプの境界を越えた脳の機能化が実現されている。本企画調査では、こうした脳の越境と融合の倫理問題に取り組む。とりわけ、当該技術に関する倫理的懸念が生じる心理的背景を探るための方法論を構想し、その構想の下、人々がこれらの事例のうちに「心の変容」や「心の融合」を認識するか、またそうした認識が倫理的懸念に対してどのように影響するかを定量的な調査実験により解明することを試みる。本企画調査では調査実験を複数件試行しながら、その規範的意義を検討するための体制強化を進める。
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