概要 | 児童養護施設などで暮らした子どもの退所後の実態把握を目的とした初の全国調査結果(厚生労働省2021年発表)では、施設などのサポートを受けていない者は5人に1人に上り、孤立している実態や長期的な見守り・支援に向けた課題が明らかになった。多くの社会的養護経験者(ケアリーバー)と支援者とのつながりは途切れてしまっている。その主な原因には、施設や里親がケアリーバーの連絡先を知らないこと、社会的養護の子どもたちは原則18歳で自立を余儀なくされる一方で、アフターケア体制は十分に整っていないことが挙げられる。子どもの多くは児童福祉から離れた時に支援が途切れ、制度の狭間に落ちてしまう現実がある。この時期のつながりの維持は社会的孤立・孤独の一次予防として重要となる。
本プロジェクトでは、この制度の穴を埋める新しい仕掛けとしてつながりを継続できるツールを開発し、社会的孤立・孤独を生まない社会像を描出する。具体的には、自立目前の児童養護施設入所児童、里親委託児童、ケアリーバー、支援者、職親などへの実態調査と分析から社会的孤立・孤独に陥るリスクの可視化と、生活状況などをチェックする指標など(評価手法)を開発するとともに、孤立と対極にあるつながりを可能とする要素を描出する。並行して、ケアリーバーと支援者が安全につながり、連絡調整できるモバイルメッセンジャーアプリを開発する。その際、モニターによるアプリの試行とヒアリングに基づきバージョンアップを行い、都市部と地方の2地域において試行し概念実証を行う。ケアリーバーが安心できる支援者に相談でき、必要な時に社会資源とつながれる仕組みの構築が最終目標である。
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