概要 | 現代社会は、東日本大震災、気候変動問題やCOVID-19など、さまざまな科学の社会問題に直面し続けている。しかし、メディアの中での科学の信頼は揺らいでいる。デジタル化したメディア環境の中で、科学の専門知や専門家はどのように信頼/不信の対象となり得るのか、専門家が語る情報は信頼/不信に値すると見なされているのか、また、それらを踏まえて実際に信頼され得るのかといった問いがある。そこで、本研究開発プロジェクトでは、インタビュー調査、ビッグデータ分析から実験研究、国際比較研究など多様な観点から分析し、明らかにする。さらに、科学とメディアをつなぐ組織の研究を同時に行い、科学への信頼に基づいた民主社会の実現を目指す社会実装の在り方を検討する。
研究開発の内容としては、マスメディアを対象とした、科学知の構成の現状の把握と分析を行う。分析結果を適宜ジャーナリストにフィードバックすることで分析の精緻化と科学報道についての報告書や論文をまとめる。また、ソーシャルメディア、ニュースのコメント欄をオンラインメディア空間における科学への信頼の対象とし自然言語処理やネットワーク分析を用いた経験研究を行うほか、さらにアイトラッカーを用いた実験研究を行う。また、科学への信頼についての市民認識とその長期的変遷を、日本社会における科学への認識として調査し、日本特有の科学に対する信頼の基盤を理解する。さらに、専門家とジャーナリストをつなぐためのメディア意見交換会の実施や、専門家のマスメディアへの取材対応やオンラインメディアでの情報発信手法を改善する取り組みなどを行い、科学の社会問題における科学の専門家とジャーナリストおよび市民相互の信頼形成を目指す。
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