1200V10A 級 α 型酸化ガリウムパワーMOSFET の開発
| 体系的番号 |
JPMJTT25J4 |
研究代表者 |
四戸 孝 株式会社 FLOSFIA, 代表取締役社長
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| 研究期間 (年度) |
2026 – (非公開)
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| 概要 | 近年、AI データセンターの電力需要は急増しており、電気自動車(xEV)や産業機器においても消費電力の増加が顕著です。電力は発電から最終的な消費に至るまでのそれぞれの場面で適切な条件に繰り返し変換されるため、変換損失の低減はエネルギー効率向上に直結します。実際、電力変換に伴う損失は国内の総発電量の 1 割を超えるとされ、電力変換効率の向上は社会的な課題となっています。こうしたことを背景に、電力変換を担うパワー半導体デバイスの性能向上と低コスト化を同時に実現することが求められています。しかし、現在広く使われるシリコンデバイスは損失が大きく、代替として注目される炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)は高性能ながら製造コストが高いという課題があります。株式会社 FLOSFIA(以下、「FLOSFIA」)が事業化を目指す α 型酸化ガリウム(α-Ga₂O₃)注 1)は、非常に大きいバンドギャップ注 2)と高い絶縁破壊電界注 3)という優れた材料特性を持ち、SiC や GaN をも上回る性能が理論的に期待されている新材料です。さらに、FLOSFIA の独自技術である「ミストドライ®法」注 4)は、低温・大気圧という製造に有利な条件で高品質なエピタキシャル膜形成を可能にします。このため、材料特性を生かしつつ低コストで量産できる点において競争力があります。今回の開発では、すでに実現している耐圧 600V 級デバイス技術を 1200V 級に拡張し、縦型 MOSFET 注5)として必要な高耐圧構造の最適化とゲート構造の改良を同時に進めます。これにより、短期間で耐圧 1200V・電流容量 10A 級の動作実証と顧客企業への試作提供を目指しています。また、JEDEC 注 6)に代表される国際的な信頼性基準に基づいた長期試験も実施し、製品レベルに必要な信頼性確保を図ります。最終的には、特性オン抵抗注 7)10mΩcm²(10 ミリオーム平方センチメートル)以下という製品レベルの性能を備えたデバイスを顧客評価向けに提供し、市場投入を進めていきます。FLOSFIA は京都大学との共同研究を通じて多数の特許を保有しており、本開発でも α 型酸化ガリウム形成法である「ミスト CVD」注 8)を改良した独自の「ミストドライ®法」「Ga₂O₃系半導体素子」「p 型酸化物半導体の製造方法」など、基幹特許を活用します。これらは長年にわたる基礎研究に支えられたもので、日本発の新材料として高く評価されています。本開発で目指すデバイスは、AI データセンター電源、xEV インバータや OBC(On-Board Charger)、産業用電源、電力インフラ機器などに幅広く適用でき、電力変換効率の向上とシステムの小型化を実現します。低損失・低コスト・高耐圧という 3 つの価値を同時に達成できれば、既存のパワー半導体市場に構造的変革をもたらす可能性があります。
注1) α 型酸化ガリウム(α-Ga₂O₃):ガリウム酸化物の結晶多形の 1 つ。非常に広いバンドギャップを持ち、高耐圧パワー半導体に適した新材料。
注2) バンドギャップ:電子が存在できないエネルギー領域の幅。広いほど高耐圧化に有利。
注3) 絶縁破壊電界:材料が電圧に耐えられる限界値。高いほど薄い高耐圧デバイスが作れる。
注4) ミストドライ®法:FLOSFIA が開発した、ミスト CVD(注 8 参照)を発展させた独自のエピタキシャル成長技術。結晶材料を含んだ液体原料を微細なミスト状にして基板へ供給し、低温(300~800 度程度)、大気圧環境で高品質の結晶層(エピ層)を形成可能な点が特徴。
注5) MOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor。パワー半導体の代表的デバイスの 1 つで、ゲート電極に加えた電圧で電流の流れを制御するトランジスタ。高速動作・低損失・高耐圧を同時に実現できる電力変換器の主要素子として広く利用。
注6) JEDEC:Joint Electron Device Engineering Council。半導体に関する国際標準を策定する業界団体。JEDEC 規格は信頼性試験の基準として世界で採用。
注7) 特性オン抵抗:デバイスがオン状態のときの電流の流れにくさを示す値。小さいほど損失が低く、エネルギー効率が高い。
注8) ミスト CVD:結晶材料を含んだ液体原料を微細なミスト状にし、加熱基板上で化学反応を起こして薄膜を形成する手法。
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