| 体系的番号 |
JPMJTT25J5 |
研究代表者 |
中尾 健人 株式会社 Gaianixx, 代表取締役社長
|
| 研究期間 (年度) |
2026 – (非公開)
|
| 概要 | 近年、圧電センサーやアクチュエーターなどの圧電デバイス市場は、技術革新に伴い医療機器、自動車用センサー、民生用電子機器など、さまざまな産業で幅広い用途に拡大し、急速に成長しています。これらの用途では、高性能、環境への配慮、そして高いエネルギー変換効率が要求されており、それらのニーズに応えるため、鉛フリー圧電セラミックスや単結晶圧電体といった先進的な圧電材料の開発が進められています。
圧電センサーやアクチュエーターなどに使用される機能性薄膜 注1)は基板上に結晶成長させる方法で製造されます。従来のエピタキシャル成長技術 注2)では、基板と機能性薄膜の格子定数 注3)の差が大きいと、機能性薄膜に歪(ひず)みやひび割れ、結晶欠陥が生じることがありました。株式会社Gaianixx(以下、「Gaianixx」)が事業化を目指す多能性中間膜 注4)は、物質の相変態を利用して「格子の不整合」を動的に解消する新しい技術です。物質の相変態をコントロールし機能性薄膜の格子定数に合わせた多能性中間膜を基板上に形成、機能性薄膜を結晶成長させることで半導体・電子デバイス製造における長年の課題であった基板の制約と機能性薄膜の結晶欠陥を同時に解決し、低コスト化を実現します。
今回の開発では、すでに実証済みの、圧電材料PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の単結晶化 注5)のための多能性中間膜の量産化技術の確立を目指します。多能性中間膜の製品化に向けて、再現性良く安定した製造プロセスと安定供給を実現するため、量産において品質のばらつきを抑える仕組みを構築します。
Gaianixxは、東京大学との共同研究および企業との共同開発を通じて、多数の特許を保有しており、本開発でも「積層構造体及びその製造方法」の基本特許を中核技術として幅広く活用します。これらは長年にわたる基礎研究の成果であり、日本発の新しい中間膜技術として高い評価を受けています。
多能性中間膜は、圧電材料向けのみならず、将来的には、GaN-on-Si(シリコン基板上に窒化ガリウムの薄膜を形成した構造)やダイヤモンドなどの次世代パワー半導体材料向けにも展開する計画です。生成AIの急速な普及とDX(デジタルトランスフォーメーション)化の進展により、データセンターや半導体工場における電力需要が爆発的に増加しており、電力変換時のエネルギー損失が大きな課題となっています。結晶欠陥を最小化することで、漏れ電流や電気抵抗を抑え、電力変換時のエネルギー損失を大幅に削減し、高効率パワー半導体の社会実装を加速させることが期待されます。
注)「多能性」は株式会社Gaianixxの登録商標です。
<用語解説>
注 1)機能性薄膜:「機能膜」とも呼ばれる。圧電性や電気光学効果(光と電気の相互作用)など、 電子デバイスとしてのコアとなる物理特性をつかさどる薄膜。多能性中間膜の上部に積層 形成される PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)や LN(ニオブ酸リチウム)、GaN(窒化ガリウム) などが代表例。
注 2)エピタキシャル成長技術:下地となる結晶基板の結晶配列に揃(そろ)えて、薄膜を結晶成 長させる技術。
注 3)格子定数:結晶をつくる単位格子(繰り返し単位の最小ブロック)の大きさと形を示す数値。 基板と機能性薄膜でこの間隔が異なると、機能性薄膜に欠陥やひび割れが生じ、性能が低下 する可能性がある。 注 4)多能性中間膜:Gaianixx の中核となる製品。基板(シリコンなど)と機能性薄膜の間に形 成される層のこと。自身の結晶構造を柔軟に変形させることで、異なる材料間の格子定数の ズレを吸収し、多能性中間膜上に形成する機能性薄膜を高品質な単結晶に成長させる役割 を持つ。
注 5)単結晶化:原子が規則正しく連続的に配列した状態にすること。一般的に、単結晶は多結晶 と比較して高性能だが、製造が難しくコストが高い。
|