概要 | カルシウムは骨の成分ですが、イオン化したカルシウムイオン(Ca2+)は様々な生理的働きをします。細胞が刺激を受けると細胞内のCa2+濃度が周期的にゆっくりと変動する現象をCa2+振動といい、この振動は様々な生命現象と関わりをもっています。本研究では、小胞体に存在して細胞内カルシウム(Ca2+)の動因に重要な役割を果たすIP3受容体というカルシウムチャネルに焦点をあて、Ca2+振動の発振メカニズムとその機能の解明を目指しました。 IP3受容体のタンパク質構造の決定や構造変換機構の解析、その機能調節に関与する新しいタンパク質分子 IRBIT、CARP,Erp44の発見、さらに、IP3受容体の背腹軸形成における役割や外分泌機構における役割などについて新知見を得ることに成功しました。本研究はカロリンスカ研究所と共同で行われました。日本側は基礎研究の立場から正常時に、スウェーデン側は臨床医学の立場から異常時に焦点をあて、相互補完的にカルシウム振動の機構解明を行いました。この成果は、遺伝子の転写や免疫、内分泌、外分泌、神経伝達(情報伝達)などの基本的メカニズムの解明や病態時の治療薬の開発に多大な貢献をすると期待されます。
|